12月9日レジュメ                         鈴木 邦江

 

 「 美術館と地域コミュニティ―栃木県馬頭町を事例として―」

 

はじめに

 

第一章 栃木県の美術館

第一節 美術館の定義について

第二節 県立美術館の役割

 第一項 栃木県立美術館について

 第二項 県立美術館の果たす役割

 

第二章 馬頭町の美術館をめぐる地域コミュニティ

第一節 馬頭町の美術館紹介

第二節 美術館設立と市民活動

第三節 美術館を取り巻くまちおこし・まちづくり

 

第三章 美術館と言う財産

第一節 美術館がもたらすもの

第二節 美術館の今後の課題と展望

 

おわりに


(1)馬頭町関係

 馬頭町の美術館を取り上げる上で、地域コミュニティに注目したい。

1)美術館設立当時の下野新聞等の資料を集めて分かった点

 ・いわむらかずお絵本の丘美術館及び馬頭町広重美術館と青木久子氏

 ・市民活動団体の存在

 

2)馬頭町での聞き取り調査

 下記のご担当者へ聞き取り調査をお願いしている。実施日は12月11日(水)。

 ・馬頭町商工会(まちづくり・まちおこしの視点から)

 ・馬頭町企画商工課

 ・馬頭町社会福祉協議会

 ・馬頭町立図書館(図書館婦人ボランティアの活動を中心に)

 ・馬頭町広重美術館

 ・いわむらかずお絵本の丘美術館

★特定非営利活動法人もうひとつの美術館については、私の取り組みが遅かったため代表の方の調整がとれず聞き取り調査をする機会を失ってしまった。更に今年度の活動は12月1日を持って終了したそうである。

 

(2)栃木県立美術館の聞き取り調査

  回答者: 栃木県立美術館 学芸課 野原さん 12月6日(金)実施

1)美術館ボランティアについて

1.参加者について

 美術館の友の会にボランティア部があり約20名が参加。参加者の方は長く活動されている高齢者の方が多い。

2.活動内容 

 活動内容は新聞記事のスクラップと友の会自体の活動のひとつである「会報 すずかけの庭」の発送。(昨年度までは監視などを担当する受付案内人を美術館が雇用しており、この方々のお昼の休憩時間を替わりにサポートすると言う活動があったが、今年度からは人材派遣を導入したためこの活動がなくなったとのこと。)

 また、友の会とは別に実験的に大学院生がボランティアで来館した子どもに作品の解説を行ったことがある。

2)他機関との関わりについて

1.県立美術館が県内の美術館に果たす役割

 運営方針に基づく。

@栃木県関係の美術資料、美術作家に関する研究調査、資料の収集保存、展示普及活動を運営の基本とする。

A内外の美術史および美術状況に幅広く対応する。

B県民が利用しやすい美術館とするため、地域の美術文化の向上、ならびに地域住民の美術に関する生涯学習等に役立つ事業を行う。

C学校教育との関連を重視する。

D常に美観を保ち、利用者の心が解放される憩いの場となるよう配慮する。

E栃木県立美術館友の会、関係諸機関との連絡協調を密にする。

 依頼があれば、県内外・公立私立の別を問わず協力を行っている。県内の美術館に果たす役割が県立美術館だから大きいのだと言うよりも、栃木県立美術館は他の県内にある美術館にはない30年と言う長い実績と経験があるのでその経験を基に指導を行っていく・主導していくべき立場にある。現在は葛生町や小杉放菴記念日光美術館に協力している。ただし、逆に小杉放菴記念日光美術館の例のように特定分野に精通したスペシャリストが育成され他の美術館に存在する場合もあるので県立美術館が協力・指導を仰ぐことも当然ある。

 一般的に美術館は企画展で他美術館の所蔵品を借りる場合が多く他機関との相互協力によって運営が成り立っている。

2.馬頭町広重美術館との関わり

 当時の渡辺知事が馬頭町広重美術館の設立に賛同し、設立のために栃木県立美術館には学芸員が一名増員された。栃木県立美術館としては学芸員二名が設立にあたり指導・協力を行った。現在は増員された一名の枠が別の新たな市町村美術館設立の協力枠となっている。

3)県内の美術館数について

 インタビュアー自身の考える美術館の定義があいまいであるため返答しかねる。

※美術館(美術博物館)の定義について<参考>

 「美術館」「ミュージアム」等の呼称が用いられているものが多数あるが、博物館法に基づくものとそうではないものがある。財団法人日本博物館協会会員に登録している栃木県の団体は23ある。そのうち、博物館法に基づく登録博物館は10館である。美術館を支えるものは「調査研究」「保存収集」「教育普及」の三本柱である。従って、例を挙げるとコレクションを購入していない「保存収集」を欠く水戸芸術館現代美術センターは美術館ではない。

3)野原氏に関して

 今回の聞き取り調査について協力していただいた野原さんは元々県立高校の美術教員であり、美術の地域普及を担当するため平成11年より栃木県立美術館に配属されたそうである。野原さんが栃木県立美術館に配属されるきっかけとなったものは平成九年からはじめた地域と美術館の普及活動を目的とした草の根活動『アートウォーク』の活動評価によるもので、この活動は後に栃木県立美術館から後援を受けるようになったとのことであった。

 野原さんに美術の教職と現在の普及担当の職務について尋ねたところ、教師の目的は「人間の成熟形成」であり美術館での職務の目的は「美術全体の普及」であり全く質の違うものであると言うお話だった。なお、現在も創作活動はされているとのことであった。 

 

4)その他

1.栃木県立美術館の位置付け

 栃木県 知事部局文化振興課の出先機関である。

2.入場料が常設展の学生料金で120円とお手頃に感じるのだがそのあり方について

 入場料の設定にはいくつか考え方がある。例としてアメリカでは入場料が安価であるがこれは企業の寄付によって成り立っているからである。寄付をした企業には税制面で優遇される措置がある。要するに、入場料の設定には財源も大きく関わるものである。

 入場料の設定と言うものは容易なものではない。県内のある美術館が利用者に調査を行ったところ、利用者が考える展示物の適正入場料は1500円だったと言う。これに対して自分自身として実際にいくらだったら利用したいか、と言う質問の回答は500円であったと言う。諸費用の概算だけで適正価格を決めたとしても利用者がないのであれば展示の意味をなさないと言う面もある。参考としては一般的に平均して100円中13円が収益だと言う。

3.最近の県立美術館の動向

 全国的に近年の美術館の動向として美術教育普及の声の高まりがある。栃木県立美術館の組織は総務課と学芸課の二つであるが、キュレーター(学芸員)とエデュケーター(普及担当者)を運営の二本柱とする考えから他の県立美術館ではさきがけとなった宮城県立美術館をはじめとして普及課を持つところが増加している。

 また、栃木県立美術館としては大学との連携も考えている。宇都宮大学に関しては教育学部美術科とのつながりはあるが国際学部とのパイプが現在はない状況である。これに対して、国際学部でも芸術論等の美術館と関連するような講義があり芸術分野の先生方も存在すると言う話をしたところ、大学の授業の一環として施設を無料で開放することも可能であるので協同して研究できれば、と言うことであった。

 

● 感 想 ●

 私が考える美術館の定義を尋ねられたとき、困ってしまった。それと言うのも、当初観光ガイド等で県内の美術館について情報を得ていた際、私自身が「美術館の定義は何か」と言う疑問が沸いたからである。博物館法に基づいたものは少ないが、栃木県には「美術館」と名のついたものは相当数ある。自分なりにもう少し美術館の定義について調べたい。

 また、インタビューを受けて下さった野原さんが同じ県職員とは言え草の根活動が評価されて教職から美術館の地域普及活動を担当されることになった経緯が面白く感じた。県の人事が適材適所に行われた好例であるし、お話を聞いていて栃木県が美術の地域普及活動に熱心に取り組んでいることがよく理解できた。その他、美術館についての基礎知識など得るものが多く大変勉強になった。